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名無し:知りたいのか知りたくないのか [こ]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
普通よりも前付きで手前にせり上がった形の角を持ち、角のほぼ真上から生えた耳は先の尖りが小さい所為で比較的小さめ、人形体との境界が曖昧な雰囲気。
妙に爪が長く(各部の指と同じ長さ)感じるが、手足がまだ成長しきっていない割に爪の成長が早かったから。後ろ足の鍵爪も大きく、一度刺すと本人しか抜けない。
右胸に蹄の様な形の痣が産まれ付きあり、本人も回りも気にする様子は無いが聞くと「キスマーク」と、答えられる。そんなキスマークがあるか。
尻尾が同年代の子より関節一つ分短い。

竜形体:まだ竜になれない

人形体:
普段から人の姿との境界が曖昧な雰囲気を持つだけあって、あまり違和感は無いが、何と無く普段の子供らしからぬ雰囲気が薄れる。
鱗が無くなった分だけ関節部の骨が浮き出て脆そうだが、肌の色は原型よりも(人的な色に)濃くなり、歳相応に戻るとも。
痣はそのまま、角のあった場所が少しだけ膨らんでいる。

詳細:崩れる物に気が付く
生き物が必要とする物、食料、水、太陽。自分達は食料を無視出来るとして、太陽はこれだけ照っているのだから問題無い、水だってある。ならこの状態は一体何だというのだろうか、最近家族の様子がおかしい。具体的に言うなら、皆揃って何か悩んでいる、しかも回りに言えないことで。そして、周りで何が起こっているのか誰も気がつけない。
何も見るからにおかしくなっている訳では無い、いっそのことコメツキムシの如く飛び回ったりして、見るからにおかしくなってくれたら全員で気がつけるのに。抽象的表現なら、小さな雨粒が長い年月を掛けて大岩に穴を開ける様な、全ては最初に始まったことじゃない。徐々に噛み合っていた物が外れてゆく。
今日は平たい石を集めて遊んだ、そう報告する言葉。尾羽を一つ千切って薪に投げ入れる仕草。生を讃えあう歌声。精を交え合おうと自分に触れる肌の熱さ。つい最近まで見知っていた物は、気が付けば自分が知っていた物から大きく掛け離れ、自分だけが一人取り残されてしまった様だ。これでは何時も通りに調子を取る自分もおかしくなってしまう。
そんな竜人が集団感染する病気なんて聞いた事も無い、聞いた事が無いからといってこの世に無い、という訳では無いのだろうし、自分達が現在進行形で正に(不名誉な)第一号なのかも知れないが、病気ならもっと個人が異常を訴える筈だと思うのは物知らずだろうか? 普段は転んだだけで痛がるのだから、動物の様子を見る限り、そもそも病気という物になったらのた打ち回って叫ぶと思うが。
我ながら自分達の回復力はとんでもない、それを信じて治らない病気は無いとタカを括りたい、しかし、今に始まった物ではなく徐々に悪くなっていたのだから、この先もこの状態は悪化して行くと考えた方が妥当。朝日を見に行く為に起こして貰った時、からかわれながら伸ばされた手、今日もまた少し歪んでしまっていた。
話をまともに聞いてくれそうな兄弟に相談をする、何かおかしくなっていないか? 思いの他真剣に聞いてくれているが、一番の問題にぶち当たった、悩む事は別におかしいことじゃない。これじゃ話をする以前に自分までおかしくなったと思われるじゃないか、すごすご引き下がる。
こうしている内にも家族はどんどんおかしくなっていく、気がついた自分が何とかしなければならないというのに。握ってしまった物はあまりに重い、いっそ手放したい、こうして砂漠に留まっているのもそういった豊かさから来る苦しみがこの場所には無いからではなかったのだろうか。自分達が豊かになった様子は無いというのに。
今の今までこの病気みたいな違和感に自分達は気がつかず、更には特に危害を加えられることだって無かった、ならこのまま自分が慣れてしまえば全ては解決する。それが出来ないのは我侭だろうか、違う、自分の縄張りに異常事態が起きれば逃げるか対処しようとするかするのは、動物というにはあんまりにも強くなりすぎた自分達にも当て嵌まる本能だ。
なら自分は一体どうすればいい、逃げるか、このまま戦うか、後者はもう必死になってやっている。なら、一人で逃げる? 変になってない奴を連れて行ってあげたいけど、もう自分以外におかしくなってない奴は残ってない。膝を抱えて自分の置かれた孤独に泣きそうになって、涙より早く瞼を押える。
もしこれが自分の憶測通りに恐ろしい病気だったらどうする? 家族を連れて行くということは治す方法が見つかるかもしれないという可能性と同時に、もしも治療法が無かった時は外の世界に治せない病原菌をバラ撒くこと、自分と同じ状態になる誰かを増やすことになる。口元が勝手に笑う、自嘲の笑いだなんて、竜人の何人が生涯で浮かべる? そう考えると更に笑ってしまう。
此処を出よう、故郷を捨てよう。自分や家族を苦しめる楽園ならクソっくらえだ。
ふいに見た右手、輪郭がぼやけ色あせて、何も考えられなくなる色、家族の違和感と同じ物が自分の手を被っている。
なんだ、自分も同じ病気に掛かってしまったのか。
耳に飛び込んでくるのは懐かしく違和感の無い兄弟の声、渡し守を頼まれた、という浮かれて弾んだ言葉。きっとこれが最後のガードになる。
きょうだい達が思い浮かべた物と同じ、青々と生い茂る草、湿った土、流れる水の音、外の世界を思い浮かべると、何故だかまた乾いた笑い声が喉を突いて出た。

備考:
・昔から勘は良い方で、目に見えない物が見える時もあったらしい
・感情の発現をするとその部分を触る
・普段から目が痛くなると手で自分の目を隠して、物を見ないまま話す

生生流転の子:夢の中で目が覚めて、また別の夢を見る、それが生ってもの [こ]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
ぷにぷに、年齢の割に発育が遅いらしく人形体と間違える程に鱗が薄く、角も小さく、捻れずに伸びたりきりで回りを皮で出来た膜がすっぽり被っている。
しかし、よく飛ぶので羽だけは歳相応(か、それ以上に)に成長しており、主羽が本人の体を大きく包み込む程と、体との比率が微妙に合わない。
髪の混じる様にして触覚は生えており、普通より柔らかい。

竜形体:まだ竜になれない

人形体:まだ人になれない

詳細:夢の終わり
見上げても上が見えない程背の高い木々、海より深く山が丸ごと沈んだような大きな湖、見た事も無い色に咲き誇る柔らかな花の香り、何よりも、皮膚や目を焼くだけではない日溜り、踏めば水を滴らせる土の感触、およそ砂漠の中とは思えない場所。
彼女はこの場所が大好きだった、家族と暮らすオアシスとも違う少し不思議な森。何時もの場所から真っ直ぐ行って、歌うサボテンを曲がり、三角岩を越えて、一本シダを目印に旋回、小さなオアシスを通り越して少し行った先、その場所はあった。
遠くて毎日来れる訳では無い、毎回羽を伸ばして飛んで行く度に羽がくたくたになって、昔は誰かの巣だったらしい枯れ草に横になるのが日課。そう、この場所だけはどれだけ風にぶつかっても肌を痛めない、遠い記憶に霞んで思い出す事も出来ない誰かの様に髪を梳いてくれる。
でも帰り道はラクチンだ、家族の誰かもこの場所を知っているらしくて、遊び疲れて眠ってしまう頃には誰かが迎えに来て、彼女はオアシスの周りで目が覚める。そして、お土産話を楽しむ。
大人は羨ましい、毎回ヘトヘトになってあの森に行く自分と違って、自分の目が覚めた時誰も疲れた様子を全く見せない。一人で飛んでいくだけではなくて、自分を抱えて飛んでいるというのに、自分もほんの少し早く大人になりたくなる。
砂漠の何処を見渡しても他に無い場所、自分の話を聞いている時のきょうだいの顔は楽しそうでもあって、何だか少し不安そうな顔をしている時がある。きっと遠くに行くから、流砂に連れて行かれてしまわないか、心配しているのだと思う。
次に行く時は家族で行きたい、そう、自分をよく膝に乗せて遊んでくれる、あの人と。今日その場所に行くと、森の周りを大きく取り囲む様にして白い花が土に敷き詰められた様に咲いていた、サボテンの花にそっくりで鳥の形をした花。
一本位摘んで行こうか、その日珍しく花摘みをする気分になって手を伸ばす、すると親しい手が伸びてきて自分の手を握る。あ、あの人だ。嬉しかった、付いて来ているのなら最初に言えばいいのに。
この優しい太陽がどうしてもみんなと見たかった、ずっと、ずっと、あまりに嬉しくなって約束をした、明日もまた一緒に此処に来ることを。指きりをする。彼は絶対に約束を破らない、また明日来る時は抱えてもらおうか。喜びに任せて遊ぶと、直ぐに日が暮れて鮮やかに染まった空を見ていると眠くなり、目を瞑る。
目が覚めた時、太陽は上って朝になっていて、自分は飛び起きた。朝だ、朝が着た事がこんなに喜ばしかった事なんて今まであっただろうか、早くあの人を起こして、何時もの場所へ行こう。まだ眠っている腹に乗って無理矢理起こすと、約束の話をする。
約束を、知らないと言われた。そんな、嘘だ、だって指切りをしたじゃないか、どれだけ彼の腕を引いて思い出させようとしても、彼は困ったような顔をして、ずっと不思議そうな目を向ける。このままではラチが明かない、引く腕に更に力を篭めて、私はその人を連れて高く空へと飛び上がった。行く気が無いのなら、自分が連れて行こう。
何時もの場所へ飛ぼうとして、何時もの場所には大きな岩山があったことを思い出した。無理矢理に加速しても、歌うサボテンは歌を聴かせてくれない。三角岩のあった筈の場所は擦り切れた小石の様な物があるだけ。一本シダなんて影も形も無い。小さなオアシスはあったが、あのオアシスは綺麗な円の形をしていたというのに、見えた水面はぐにゃぐにゃと好き勝手な方向に曲がっていて。
そう、全部、夢だった。
旅人の話を聞いて外を夢想する内に、知らず知らず、外の世界を自分の中で形作って夢見ていた。
どれだけ高く飛んでも風は包み込んでくれない、疲れ果てて落ちそうになった自分をその人は受け止めてくれて、花だった筈の焼けた砂の上に降りる。目が痛くて目が明けられない、目を明ければあの場所に着いている筈なのに、風は酷く叩き付けてくるだけ。
ふいに風が止んで、温かな指が髪を梳く。「綺麗な、白い花だった」と。

あの白い花、サボテンの花は自分が一番好きな花だった。
泣きついたあの胸の温もり、私は、生涯忘れる事は無いだろう。

備考:
・本当は人に変化出来る歳だが、何回やっても中途半端な結果(体半分だけ、とか)(一度その半端に状態から戻れなくなったりした)になるらしく、未だに出来ない

黄泉坂の子:コーンコンチキ [こ]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
耳の直ぐ真上から大きく体を包む様にした、大きく平たい角。想像するならまるでヘラジカ。副角もなんとなく大きい。(額にあって他より目立つ程度)
触角部分は先にだけ毛が多く生え、まだ未熟なのか先端を動かす事は出来ず、よく風に煽られて適当な動きをされては困っているのだとか。
ほっそりとしてまるで女性の様な体付きをしているが、腰骨の形が男性的。言い方を変えるとするなら「中性的」だが、接近して見ると(仕草等から肉の付く場所が変わる為)男女それぞれに偏った面がある。
足先の鱗は飛び抜けて密集しており、足音が蹄の様に聞こえる程硬い。がっしりと爪部分と足の裏がほぼ同化し気味なので、本当に鱗で出来た竜の脚の様。
副鰭の先が二つに裂けた風(ハート形)になっているが、これは産まれ付き。尾は細い。

竜形体:鹿竜
輝く鹿のような姿で、原型と同じ様な大きく平たい角(根元付近は薄い皮に包まれている)と、鬣の代わりに身体と背中一対のづつ生えた背鰭、蝙蝠の物のように発達した大きく根元から二又になった尾鰭が特徴。 平角の麒麟。
体長は小さめ(馬の二倍と少し程度)でまるで獣の様だが、皮膚は硬質な鱗状で、筋力の妨げにならない程度なら部位の引き伸ばしが効くことが確認出来る。また、背鰭は一種の避雷針の様な役割を果たし、体内に溜まった電気を稲妻状に増幅して放つことが可能。
素早く跳躍しながら駆け回り、羽状に進化した尾鰭で飛ぶ(その場合は体を大きく起こす体勢になるが)ことも出来、鰭がある割には退化してしまっているので泳ぎは苦手。水中では体を大きくくねらせながら泳ぐ。
足の蹄は三叉、まるで鳥の足の様で常に爪先立ちの様な形で歩く。実は常に浮いている。

人形体:
体の起伏は少ないが、(見かけと態度だけなら)性的な魅力を何処か持ち合わせる。子供と大人の中間。マニアな人にはたまらんぜ。
黒目が大きく良く動き子供っぽさが割増(出っ張った部分無くなっただけあって小さくもなっている)されているが、鱗が無くなった分関節が動きやすい、と、行動は逆にガサツになる。
健康を危ぶまれない程度に真っ白い肌、しっかり日焼けもするし、日焼けは剥けるタイプ。

詳細:見つからなかった人。
竜人は獣の言葉を喋ることが出来る、これは個体差もあるが簡単な所で同属の声を出すこと、高度な所までいくと自分を対象の生物と同種の生物なのだと教えて、その先の行動を共にすることだって出来る。
彼は獣の言葉で接す事が得意だ、皆は大体鳥や小動物の基本形が精一杯な所があるが、自分はもっともっと大型な、何時も日と共に空に飛び立って暮れると砂に潜ってしまう大王ヤンマなんかみたいな、自分でも訳解らない物と仲良くする事も出来た。
最初に口を聞いてくれたのは蜥蜴、次は鳥、慣れれば慣れて喋る事が出来る様になればなる程、彼は獣達の世界にのめりこんでゆく。他人と接する事は得意で、一人きりになるのが好きな訳でもなく、それだというのに彼は時が進めば進む程に兄弟と話している時より、獣達と話すことの方が多くなった。
毎日毎日オアシスの片隅に左足だけ突っ込んで、他の四肢を丸めてじっと水面の見詰め、何かが話すのを聞く。あわよくば自分もそれに加わって、何か良く解らない大きな流れ、その流れの中に加わる。
話をするといえど、完全に言葉が解る訳では無く、あくまで解るのは感情だけだ。その感情を言葉に紐解いて、紐解いた結び目を撫で付ける。それを更に毎度。まだ彼は(竜人としては)幼く、解読出来たのはほんの僅か、「あんたおれが好きかい?」と犬の様な生き物に話された時、そうだ、と答えられる程度。
どうせ竜人の生は途方も無く長く、終わりという終わりも無い。つまり、彼にとっては時間を惜しむ必要が無いに等しい、だからこそ、意味不明で原始的な感情を一々言葉として考えるだなんて、途方も無い真似をする気にもなれたのだが。
旅人がやって来て、自分もまた話を聞きながらゲラゲラ笑って過ごす時も、外へ出ない理由を聞かれて笑って答える時も、何時も何時も其方側が気がかりでならなかった。今この瞬間、自分の周りで意味不明摩訶不思議な出来事が起きているかもしれない、ああ、早く話を聞きに行きたいな。
自分はなんて薄情なんだ、家族と話していてもそんな事を考える時が増えた、きっと自分はこの場にいる全員が別の場所へ行ってしまったとしても、頭の片隅で其方側に興味を向け続けているに違いない。何度そう思ったか。
その日は唐突にやって来ようとしていた、自分は応援をしながら、最後までずっとこの場に留まる意見を出し続けた。そう、まだ自分はその巨大な流れの跳躍を見ていない、波打つ様も、何もかもを過ごした場所で何もかもを見尽くしては居ない。
出立は強制では無く、自分の意思で決めることに決定した晩、理由は其々で旅立つ事が決定したのを心の底で感じた時、彼は眠るのを止めた。一晩、丸一日費やして宴にも仲間の言葉にも耳を傾けず、飲食を忘れて自分が求めた瞬間に向って手を伸ばした。その巨大な流れが、物が重力に従って落ちることと同じ、絶対的な流れが決定的な瞬間を迎えて姿を変える瞬間を!
しかし、待てども待てども瞬間はやってこない、それはそうだ、自分が産まれてからこの瞬間に至るまで見続けてきて一度も無かったのだから、望む瞬間に起こる訳が無い。昇る太陽を恨めしく思う。
もう絶対に元に戻らない、旅人になった家族の背を見ながら、彼は身を翻してその背に飛びついた。
自分も付いて行く、と。
探しても、探しても、見つけても、誰にも伝えられなければ意味が無い。
あれ程のことを延々と続けていたのは自分の興味ではあったが、他でもない、家族へ世の変わりをどの誰よりも早く教えたかったが為だったのだから。そうだ、旅人に外を教わる家族達に、自分は嫉妬していたんだ。知恵を持って誰かを導ける何者かを。
歩調を揃えながら誰へとも無く口走る。

見付けたい物、この先で見つけて、何時か誰かを導くのだ。

備考:
・額の辺りに指を置くと集中出来るらしい
・自分の角はカッコ良いと思っているが、誰かを抱き締める時に邪魔

0012:いやならみるないやならみるな [こ]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
やたらと多く伸びた髪は、ごわごわしていそうな髪だが、実際触ると完全に乾ききったススキの束の様な手触り。
狐眼。血色は良く興奮等をすると赤味掛かり、面差しは若干地味ともいえるが、良く見れば抜き身の刃の様な眼光をしている。様はじっと見ると怖い顔。
歳相応に未熟な竜人、角はまだ芯になる部分しか生えておらず、小さく濃い色をした出っ張りがあるだけ。額の副角は軟骨状(少し発育が遅い)で指で触るとゴロゴロ動く、しかし、動かすと痛いらしい。
副羽はそれなりの成長を見せ、大きく広げれば自分の身長よりも大きく広がり、主羽はそれを包み込む様に成長した。舌先はもう完全に分かれており、それぞれを勝手に動かす事も可能。
尻尾が少し短め、尾羽らしい物が生えてきた。

竜形体:まだ竜にはなれない

人形体:まだ人にはなれない

詳細:透明じゃない誰か
自分は没個性でどう考えても影が薄い、そんな事を考え始めたのは彼が自分の顔を水鏡で覗いた時、いきなり魚が飛んできて自分を映していた水面が揺らいだ時から。彼は自分の美に大して自信が無かった。
思えば自分に個性らしい個性なんて、自分で上げて幾つ上げられるだろう、理屈っぽい……は、もっと理屈っぽいのがいる。正義感……も、もっと強いのがいる。顔、論外。年齢、末っ子。
ずっと砂漠に残って荒涼とした風を浴びる道を選んだこと、それだって自分が選んだ事じゃあなく、ほんの赤子の頃に何と無く周りと一緒にそんな風になっていただけ。まあ、周りのきょうだい達も深く考えた奴なんていないだろうが。
なら何故自分はこうして此処に残っているのだろうか、仮に離れたとしても皆とは繋がりあっている、肌の温もりを感じれなくなって時々ホームシックになる以外はきっと何も変わらないだろう。
彼は、生まれて初めてとても深く困った、今まで何一つして欠けた物が無いと思っていた世界に、白い紙に一滴黒を垂らす様にじわり、と染みが広がる。困った、自分には此処に留まる理由すらないぞ。欠けた物は自分自身の存在。
ある日やって来た旅立ちの日、強く手を引かれて砂漠の外に産まれて始めて出るが、心には大きな感傷も何も浮かび上がってはこない。感じるのはただ、生まれて始めて嗅ぐ湿った空気の匂い。きょうだい達は別の何かを感じたのだろうか。何も感じないのは自分に個性が無いから?
そして出会うのは新しい太陽、真っ赤に燃えるだけではなく優しく包むような光、砂金の様に輝くだけではない土の感触、見た事も無い物が山積みになった世界は目新しく、刺激的で、最初に会った不安は全て吹き飛んだ。
旅は続く、最初の夜が終わりを向え、次に、その次にと日が昇っては沈むのに気が付いて、またもう一つ考える。もう誰も「此処にいろ」とは言っていない、なら何で自分は此処にいるのか。
あの場所にいる理由は無かった、それと同時に、出て行く理由も無い。
今も。
ならこのままでいいか。
そう月に向って拳を突き出した時、もう個性なんて欲しいとは思わなかった。

備考:
・予知能力に優れ、常に目を細めているのは集中している時の癖がずっと出ているから……らしい。
・蝙蝠を呼ぶのが得意で、まるでペットの様に扱える

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