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0013:有形の真実 [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
耳の直ぐ上辺りから小さく獣の耳のように突き出た角、大きさは副角と大して変わりがなく、感度も今一なのだが代わりに触角が発達している
角の代わりでもある螺旋形を描きながらなめらかな曲線で構成された触角は、先の丸まりが非常に急で先に丸いものが付いているようにも見えるが、それを伸ばせば他の誰よりも長く微細な動きをさせることも出来る。
羽は薄く、体毛等が無い代わりに非常に大きく長距離を跳ぶ形に特化されており、先に付いた指は殆ど骨に同化して動かない。下羽と主羽の大きさは同じ程度で、内側に収納出来ない。
副指の周りに大量の毛が生えていて、外見こそはただの毛と変わらないがこれは竜人の爪でしか切れない程強靭、一種の先祖がえりだといわれている。
二本目の触手だけ長い。鰭部分全般が未発達な為、水中にいることは苦手。

竜形体:鋼竜
巨大でサンショウウオに似た平面に近い本体。牙のようにも見える口元から伸び先が丸まった巨大な角、 体をうねらせて角で砂を掘り進める為に、眼球を守りつつ視界を確保する必要があり瞼は透明。
この牙の様な角は舌や触角を兼ねた感覚器官であり、地質や地表の様子、温度や湿度を触るだけで大まかに理解出来るので、地中で物に激突するようなことはない。
背中に頭部から尾に並ぶ山脈のように甲殻をもち、これは土の中を泳ぎながら移動し、同時に砂中で飲み込んだ有機物を体内で精錬して作った一種の特殊合金であり、外見は無機物だが感覚や神経は通っている。自分の感覚で取り外すことも可能(あまり多くなりすぎると重くて前に進めなくなる)
前足は羽状に進化して無く、背中に生えた退化した羽と二対で初めて空が飛ぶことが出来る。水かきならぬ砂かきの付いた後ろ足もまた退化してしまっているが、見かけよりは強い力を持ち、砂中に一旦潜ってからの大ジャンプを見せることがある。

人形体:
空気感のあるふわふわした子供。
まだ歳相応の幼い顔立ちをしているが、見せる表情は大人その物であって、癪に障らない程度の達観した物言いがそれに拍車をかけている。
何故か産まれ付き足首や手首が細く、女性の手で一纏めに出来る程度、本人は何もしていないし普通に動く(収納部位も普通)ので、特に問題は無い
足の平が大きい。

詳細:生死時間探求者
ある夜、家族に内緒で弟達が空を飛ぶ練習をしていた。当然、落ちたり、転んだり、「お前達の年頃ではまだ飛べないんだよ」と、釘を刺して、怪我が酷くなってしまう前に止めた。大人になれば飛べるようになる、時間が経過して、体が成長して。
荒涼として見える砂漠には山の様な生き物が蠢いている、彼もまたその空々漠々たる中に住んで生きる生命の一匹、ただ一つだけ他と差があるとするなら、彼を含む彼らには『死』というものがほぼ存在しない事だろうか。と、彼は考えた。
竜人の時間には終わりが無い、ただ少し遠くへ行ってしまうことがあったとしても、『死』と呼ばれることを経験した竜人は限られる程度(少なくとも自分の生きている限りは物の話にも上がった試しがない)しかなく、こうしてちょっとしたことで死を迎える生き物達と自分達の間には、決定的な差が見て取れる。
他にも大きく喰い違った所はある、生き物達が日々切磋琢磨して食料を得ようとしているのに、自分達はそう焦らなくても特に飢える事はない。飢え死にした竜人なんて聞いたことが無く、仲間同士で睦みあっていれば満たされる。
それなら自分達は『生き物』じゃない? だから自分達には死が遠い、普通の生き物から遠いから死も遠い、それでも自分達は水を飲まないと流石に辛い。太陽の光に当たらないと辛い。自分達は「生き物」に似た何か。なら、死に物? 生きているの反対が死なら、自分達はそこに転がっていたごみむしの死体と変わらないのだろうか。でも、死体は水を飲まない。
弟達が水を飲んでいる、水を飲むのは生き物の証だ、土や岩は水を飲まない。きっとまた空を飛ぼうとしているのだろう、まだ空を飛べる歳ではないと何度言っても聞こうとしないから困る。またそっと後をつけて、怪我が酷くなる前に止めた。怪我なんて竜人にとっては大したことではないが、痛い思いをさせるのは辛い。
もしや、滞っている? 止まっているのか? 竜人は皆、生命として停止している? 生命の停止、それは進化や退化、前進を失った時。そういった生き物は遠からず、何が作用する訳でもなく消えてしまった。自分が好きだった砂漠の鳥も、ある時からめっきり減って、それきりだ。考えれば、永遠にこの場に留まる事を選ぶ竜人が現れた段階で、きっと全ては始まって終っていたのだ。
確かに竜人が変化したという話は聞いたことが無い、なら竜人もまた止まってしまうのだろうか、止まって、そのまま風化して最初から居なかったように。死にもしないのに滅んでしまうとは、一体どんな状態なのだろう、生きていない状態を経験したことがないから想像も付かないが。
一度止まった進化が蘇ることは二度とない。ある日旅人がやってきた、行動を止めてしまった自分達と旅人はいったいどう違うのかを探して、止まってしまったものを元に戻そうと思ったが、今度は家族がその旅人をその場に止めてしまった。旅人が留まってくれるといったことは一個人としては嬉しかったが、彼も止まってしまうのかと思えば悲しくなった。
膝を丸めて眠ったある夜、拙い羽音で目を覚ます、体を起こして見れば弟達が飛んでいた。そんな、まだ飛べるようになる歳ではないというのに、どうして? 聞けば、旅人の変な飛び方を真似して、何度も練習をして、やっと飛べる様になったのだという。
この瞬間、自分の中で滞っていた全ては解けたのだと自覚する。
確かに竜人はその全てを不変のものにしてしまったことと引き換えに、生きながら止まってしまった種族ともいえる。それでも、「死んだ」という状態から遠いのは、生きているから、生よりも確固として輝く、ただの獣にはない死を遠ざける決定的な「要素」を自分達はまだ持ち合わせていたから。
それは、好奇心。
自分もまた、その好奇心で知らず知らずに動いていたのだと、自覚した。

備考:
・鰓やら何やらが発達していないこととは別にカナズチ
・水苦手
・竜形体で背中の鉱石を外した姿は恥ずかしすぎて人に見せたくないらしい
・意識すれば舌足らずな喋り方を正すことは出来るが、直ぐに戻る
・年下にお兄ちゃん風を吹かせるタイプ

百眼百手の者:お前だけが俺にもう一度歩みを教えた [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
頭部から前方に迫り出すように反った角、根元付近で二股に分かれており、主角なのに副角と大して変わらない太さ。鰓はほぼ皮膚と同化して見えないが、機能には差し障りない様子。耳の中のひだがまるでスピーカーの中身のように凹凸している。
羽がなんとなく横に向って大きく広がり細長いので、他より皮の張った横の面積が狭め。
薄くよく動く舌、触角が根元から通常より太く、繊毛部分に毛が生えていない。その分が反動なのか、触手・副鰭には割増鱗が多く生え、普段は大して事無いが意識を向けるとどちらも物凄く硬くなり、丈夫。副羽ぶよぶよ、ふにゃふにゃ、骨が細い。
尾羽は無く、尻尾もぶにょぶにょ。神経は通っている。

竜形体:霞竜
粘膜が体表と皮膚と大して変わらない性質を持ち、顔の側面から大きく飛び出した目を左右別々に動かすことが出来、その角度は360度にもなる。
鼻の頭から前方へ突き出た角、舌は蛇腹状、普段はゴムの様に筋肉が収縮している。舌骨を押し出すことで縮んでいた筋肉が急激に弛緩し、前方に射出される作り。舌は粘着質で覆われており、獲物を付着させることができる。
巻きつくような形状の尻尾、指先にひだ。指は5本だが、前肢は内側の3本の指と外側の2本の指、後肢は内側の2本の趾と外側の3本の趾が癒合し二股になっている。
日光に強く当たる部分のみ所々鉱物化している。羽はその硬質化した皮膚(角)に守られ、非常に重いものの筋肉が凝縮されている為、一回の羽ばたきで高く飛び上がれる。
獣の目に映らないよう体表に模様を浮かび上がらせ、性質を変化させることが可能。カメレオンのような外見。

人形体:
ひょろひょろ縦に長い体型、日に当たっても日焼けしない体質で不健康そうなまっしろしろ。
前髪で顔を隠し、前髪を大きく伸ばして(後ろ髪よりもずっと長い)で顔を隠しているが、洋猫のような眼をしているらしい。しかし、幸薄そうなんだとか。
極度の猫背で胡座で座らせると前屈みになり、肘が地面に付いた上、そのまま頭を地面に付けられる程。

詳細:古い思念を手繰る
月の光を遮るもの一つ無い広大な砂漠、銀の月の下、荒涼とした風に思念を乗せて飛ばす者が一人。彼はお世辞にも外交的とはいえなかったが、同じ様に内向的で趣味が合う友人とは長く、深い付き合いをしており、この時間は何時も北の風を愛して旅の果てに風吹きの大洞窟に住んでいる自分より1000倍と強は長生きしているらしい友人と会話を楽しむ時間、この日もまた流れる流砂の様子を語り合って楽しんだ。
互いの活動範囲の大きな食い違いによって実際に会って語り合った事はなかった、互いが互いとわざわざ周りに迷惑を掛け合ってまで会わずとも思念を繋ぐだけで満足していて、肉体的な繋がりを愛する竜人の中、二人は稀有な性質を持った似たもの同士だったから成り立つ奇妙な関係。少なくとも彼にとっての親友ともいえる彼はどれだけ離れた場所にいても関係無く、何時でも同じ時に唐突な会話を始められる仲ではあったが。
ある時、また月の水面に思念を送り帰って来た思念が、まるで朧のように震えていたことに気が付く。一体何があったのかを訊ねると、彼の思っていた相手が「旅立ってしまった」のだと聞いた。泣いているのか、思念の震えが収まることは無く、一晩中互いの意識を繋いでいたというのに交わした言葉は二言、三言、ぶっつりと途切れた思念は夜明けの中に解けて溶けて、聞こえなくなる。初めて、傍にいないことを嘆いた、涙を拭えないことを。
それから精を感知することは出来ても思念を繋げる事が出来ず、月日は流れて二年、まるであの日が帰って来たかのように三日月の月光に紛れて彼の思念が届いた。あれからずっと旅をしていたのだと、もう一度旅をして沢山の物を見て、沢山の友人と出会って、話し合い、触れ合って、戻ってきたのだと。初めて驚きと共に気付く、感じる精は今までと比べ物にならない程近く、大砂漠の東の外れに立っているではないか。彼はほんの目と鼻の先、今すぐ傍まで来ているのだ。居ても経っても居られず飛び上がる。
誰も知らない場所を見つけた時の感動、新しい友達が出来たことの喜び、どんな場所を旅したか、どんなことを話したか、自分は何を考えたか、旅人になった彼は全速力で飛ぶ彼に語りかける。思念を返す間も惜しんで羽を動かし、流砂を通り越し、岩が転がる砂漠の終わりに近付き、遂に会話と変わらない距離まで精が近付いた時、今まで感じたことが無い感情に満ちた思念が届く。「ああ……やっぱり、お前だけが……」と。脳裏に浮んだ表情は泣き笑い、はにかんだ表情が霞に消えると同じくして、彼の思念と精は暁に旅立った。
砂漠の終わりに立つ。先程まで彼がいた場所に彼はいない、辺りを探しても精も何も感じる事は出来ず、彼は今度こそ存在ごと見えない。背に夜明けの輝きを感じながら、足元に一匹の虫が転がってるのを見て、指で突付く。動かない、この虫は普段なら獣の気配を感じただけで逃げてしまうというの、瑠璃色の殻をどれだけ触っても動かない。そうか、こうなってしまったのか。そう、彼は夜明けに目を細め、霞む視界を拭って再び背を向けた。
その後、旅の脚を踏み、仲間の背を見ながら考える。もしもこの背を失ったとしても、自分は旅の歩みを止める事は無いだろう、自分の後に付いて歩く仲間達の為に。ならば、たった一人になった時、自分は一体どうするのだろうか。瞼の裏の表情に今なら答えが出せる、きっとあの時動かなくなった虫と同じ様に、その時こそ旅の歩みを止めてまた新たな場所へと旅立ってゆくのだろう。
ただ、もしあの時の彼が浮かべた表情、あれと同じ物を自分が浮かべる時がやってきたのなら。また旅を続ける、その時の自分はまだ、探し残した事があったのだろうから。脚を進め、夜明けに立ち、場所を探し、人と出会い、旅を続ける。
その時の自分は間違い無く幸福なのだろう。
自分が決めた旅の脚を鈍らせる程の楽園を真の意味で見つけられたのだから。

備考:
・顔を隠しているのはただ単にシャイだから
・運は悪く無いがいかんせんお人好し

薄命の者:ドングリとシイノミ [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
副角が通常より二回り程大きく硬くなっており、目立って額から突き出ている。後頭部から生えた触角はまだ短いものの、先端へ行けば行く程繊毛の隔離が短くなって先端が埋もれている為、パッと形ごと別の物に見える。
肺器官が発達しているお陰で、副鰭と副鰓が外開きに(言い方変えると閉じるの下手)付く。防護液の分泌が活発なお陰で鰓の周りに生えた皮膚が長い。
尾羽の数は二本。根元にいけばいくだけ指先一本づつ太くなっており、(根元のしっかりした物なら更に)発火性が良いがもげ難いので、もごうとする前に他のきょうだいが代わりに火を付けている。
手足の部分だけ人の手に近く爪が短い為、細かい事が得意。足先の指が長いので物を掴める。羽先の指なんかも長い、掴める。

竜形体:狼竜
体表の見える部分に鱗が少なく、竜にしては珍しく哺乳類的(竜人は胎生)な特徴と、耳が長いこと以外は狼に似た外見を持つ。(しかし巨大)濡羽の様にしっとりとした毛並み、頭部からから肩まで(長さから考えると体を被う程)生えた鬣は揺らぐ炎にようで、毛の先まで神経が通っているので自意識で動かせる。
鼻先から生えた一本角には角飾りらしい硬質な文様、長い牙、羽ならぬ毛に覆われた羽。何れにも文様が入っているが、これは威嚇の為ではなく、本当に文様の分の溝によって体温調節を図っているらしい。
息を吸って吐く勢いで口内の大気を圧縮することが出来、岩盤にも穴を開ける威力の空気砲を放つことが出来る。ふさふさの尻尾は毛を硬貨させてハリモグラの様に飛ばせる、一度肉に刺さった毛は内部でささくれる為、抜けない。

人形体:
ロリロリのつるぺた、かわいい幼児体型というより人体として未発達といった風で、内臓が詰まっている所為で出た腹と僅かながら肋骨が浮いているのが特徴。
元から人の様な脆さと儚さが同居した形をしていたが、それに余計に拍車が掛かり、歩いたら折れそうな生物離れした印象。(でもちゃんと動くし食べるし出します)
足の指が長いのはコチラも同じ、物が掴める。

詳細:
趣味、巣作り、自分を語る上で一番に出てくるのはコレだろう。木の枝、がまの穂、鳥の羽、獣の毛、そういった物で出来た城は、自分が自分で作った家。あなぐらより夜寝易いと割りと好評だった時から作り始めた。
風当たりのある所に作ると翌日には十中八九壊れている、大砂漠の夜風は強すぎて、細かい事をするのは昔から好きだったので作り直すのは苦痛ではないが、残骸になった物を見るとほんの少しだけ自分の中で感傷が首をもたげる。
自分達は基本的には雑魚寝、良くて適当な葉っぱを掛ける。体から生えたこの羽は鳥の羽なんかよりずっと温かいし、家族同士で肌を擦り合わせていた方が心が落ち着く。
外の世界の人は巣を作らないらしい、理由は解る、自分達には必要性が無いから、第一同族の大半は旅をしながら暮らしている、一々作っては壊れる物に気を掛ける程酔狂でもないということだろう。
渡りに慣れていない旅人の宿として作った巣を与えたことがあった、悪意はない様子だったが随分と笑われた、こんなことをしている同族を自分は見た事がない、と、ほんの少し傷付いた。
ただ、それは外は自分に足を遠ざけさせる理由足りえた。自分は本当にこの無駄な工程が好きなのだ。大きな鳥の羽を拾って組んだ木の枝に刺す、寝るだけだったら別に穴を掘ってそこに潜っているだけで良いだろうけど、物を作る事を無碍にするのは好きじゃない。
今日作った巣も壊れた、砂に埋もれて。砂を掘ってあの見事だった羽を捜す、捜してどうするという訳でも無いが、砂を掘ったら割りと直ぐ早く出てきた。ヨレヨレになったそれを見た時、こんなものの為に焼け付く砂に手を突っ込んだ自分は馬鹿だろうか、そう一瞬考えて、直ぐに否定する。
良い方を欲しくなるのは悪い事ではない筈、眠りやすい場所、食べやすい食べ物、そういった心地良い物に囲まれたいと、誰もがどうして思わない、思えないのだろうか。
大オアシスに人が来た、そこそこ年齢を重ねた旅人らしく、見た印象は父がして見せる竜と人の中間の形体、アレなのかと思うような男の旅人。彼は一人で、愛想が無い訳ではないが、今までの旅人よりもずっと無口だった。
蜘蛛の巣を一纏めにして外れへ運ぶ時、その旅人が自分の後ろに立っているのに気が付いて、木を組み始めた時からそこにいるのだと言われた。つまり、物を作る姿を見られた。
今日の夜会うことを約束させる、自分は可笑しいことをしているのだろうか、その晩は(変かもしれないが)自分の作った巣に潜り込んだ。約束の場所は此処、火を焚けるように開けた穴から尾羽の燃える煙が出て、オレンジ色の光は石で囲んだ穴に収まって、葉を焼く事は無い。
旅人は約束を破ったりはせず、黙って自分の巣に来てくれた、普段はあれだけ妙なマネをされるのは嫌がっているというのに、こんな簡単に着てくれるとは正直驚く。木の枝の先に裂いた林檎を刺して焼いて二人で食べた。すっぱい。
自分はそんなに不安げな顔をしていたのだろうか、旅人が心配して頭を撫でてくれた。こんなに細かく作られた巣を見るのは初めてだ、と目が細められる。変だろうか、答えは直ぐに帰って来た。「変わっているかもしれないが、自分は好きだ」と。
頭に乗せられた手は自分をあやす為ではなく、賞賛として、自分を褒める為の物だったのだ。
数回の夜が過ぎた後、この旅人はこの砂漠に……殆ど強引にだが、暫くの間定住する事になった。大ムカデの甲殻の欠片、明日はコレで何か作ってみようか、日に透ける色のそれを見ながら考える。

物の良い所は何度壊れても、壊しても、何度でもまた作り直せること。

何時か、何時かこの砂漠から自分が旅立つ時は、仲間と体を擦り合わせて、穂綿の感触を必要になった夜の為にまた巣を作ろう。
頭を撫でてくれた手を思い出して。

備考:
・足先器用だが爪が短いのでよく落ちる
・足の指で木の枝をクルクル回せる

虚の者:音も無い温もりが二人を包んで [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
太く左右に向って伸びた角が特徴、伸びすぎた爪の様に筋が根元から先端に集まっていて、手触りはざらざら。先端まで血管と神経が通っている為、触ると妙に柔らかくて温かく、根元からは脈が計れる。
体表の鱗が非常に多く成長していて、それはもう手足は勿論のこと胸から腹から羽から果てには頬まで生えており、感情が昂ぶると鱗が逆立って精の色に波打つ。
羽は主羽こそ歳相応の物が生えているが、鰭も含めて二対は小さく、飛行はそこまで得意ではない。主羽の表面に何故か(太っても無いのに)皮が沢山余っており、触るとぶよぶよしている。
ひょろりと薄く、細く、繊毛が生えていない長い触角、精度に優れすぎて遠くの「感覚」まで共有してしまう程、だとか。

竜形体:蛾竜
顎が嘴のように進化した小型の獣脚類風の外見、鱗の一枚一枚が細かく体毛は無し。棘のついた襟飾りを持つ。襟飾りの表面には体内で生成される鱗粉の様な物で大きな目玉模様が描かれており、大きく広げることによって威嚇をする。襟飾りは空中や水中、地中の音が分散し易い場所での聴覚の強化を図った物。
羽は蛾の羽に似た形状、二対一組で飾り羽があり、皮膜部分が少なく肉厚で襟飾りと同じ様に表面が鱗粉に包まれ、ひだ状の文様が浮かび上がっている。この鱗粉は防水作用が非常に強い為、水中にも問題無く進んで行く事が出来るが、何らかの衝撃で落ちてしまった際はまた生成されるまで飛べない。
目の真上に二本角、血の通った部分(眼球も)を強化する為に根元は装甲状になっており、実際の角(骨)の太さが、これによって更に太く見える。
尾は先端部が根棒状で、最先端が細い針のようになっており、根棒状になった部分で体内の鱗粉を液化することによって同一の物質で出来た麻痺毒や、溶解液を刺し込むことも可能。
鱗粉は別生物の体内に入って初めて毒性を持ち、生成前は強い興奮作用を持つとか。

人形体:
何時も眠そうな顔をした地味っぽい美人、左目だけ何故か二重。あまりにも夜更かししすぎ三重や四重になっている時もあるという、左目だけ。
肌の色は白く、鱗が無くなった場所にほんの少し血の色が透けて見えて、見ようによっては治りかけた傷痕の様に見えなくも無い。
骨の薄い耳は柔らかくて痛覚所か感覚も鈍く、ちょっとしたこと(押すとか)でぶよ、と形が歪む。
別に肉が無い訳では無いのに骨格が浮いて見えるのは最早体質。

詳細:揺り起こす子供
昔、西からやってきたという来た旅人が興味深げに話を聞く家族と火を囲んでいた時、旅の話のついでにこんな話をしていた「この世界はとてもとても大きな竜が見ている夢で、世界の終わりはそいつが目を覚ました時なのだ」と。
少しだけ怖くもある不可思議な話を聞いた夜、夜更けに独りで輪を離れて音も無く冷え切った風に体を晒し、大声で叫んだ「オーイ」渾身の声で叫ぶと、辺り一体で活動をしていた生物が身を縮こまらせ、眠っていた小さな物が飛び起きたのを感じる。それでも、期待していたことは何も起きやしなかった。
その日から、こうして叫ぶ事は自分の日課になった。目的は、夢を見ているらしい誰かを叩き起こす為、自分の夢や寝言に起こされるなんて珍しい話でもないし、こうして毎日叫べば何時かは起きる筈、「オーイ」今度もまたピクとも反応しやしない。
別に「世界を終わらせてみたかった」とか、そんな訳では無い、世界を終わらせる程の不満も、不満を感じる為の感情もとうの昔に薄れて消えた。今こうして叫ぶ理由だって、考えてもキリが無い、強いて言うなら知的好奇心。ということにする。
揺さぶり起こしてやりたいところだが、竜の姿で大暴れしても本人を殴ったり叩いたりしないなら、実力行使で起こすというようなことは出来ない。第一、竜になって暴れようとしたらバカに全力で叩き伏せられて、目が覚めたのは日が暮れてからだった。まだ頭が痛い。
ねぼすけめ、今日も叫ぶ「オーイ」勿論、夢の終わりが見えてくる筈が無く、最近の奇行を家族に取り調べされる。朝○ちさせてやれば起きるのではないか、と言われたので、思いつく限りの痴態を(一人で)演じてみたが、直ぐに「一人で」は撤回された上、虚しくなったから止めた。
竜人は何時頃から自分達が存在しているかを知らない、自分が確証を持てる限りで3000年、もしかしたらその歴史すら一瞬の夢で作られた物なのかもしれない。3000の夢なら、どうしてそんな長きに渡って目覚めないのか、それがどうしても知りたい。兄弟達の感情が外へ向っているのも、世界が滅ぶだとかも、興味の前には塵の如く軽かった。
感情が感情を呼んだのか、あのバカが外から沢山の旅人を連れてきた、これは確実に皆付いて行くだろう。バカがお膳立てしたのも、筆頭の男が魅力的なのもそうだが、何よりももう皆限界だ、外への興味が抑え切れやしない。決断は、思っていた通り早く、数日後に自分もまた旅の空にいた。叫ぶのは止めない。
地面が揺れる、水面に映る三日月がゆらめき、物凄い水飛沫と共に泉の水が立ち上がって周りの木々を薙ぎ倒し、辺り一体に撒き散らされる。自分と、誰かが水に巻き込まれて、遠くを飛んでいる仲間からどんどん離れていって……目が覚めた時、汗がびっしょり出て喉がカラカラになって、急いで水を飲みに行った。最初に付いたこの泉の形、夢の中に出てきた物とそっくり、同じだ。
空に浮んでいるのは三日月、後ろを振り返ると旅人が来ていた。こっちに来てはいけない。夢の通りになってしまう。そんな気がして、自分は泉の方へと逃げる、相手は追ってきて、自分の手を掴んで思い切り抱き寄せた。水の冷たい感触、どうやら、あんまり勢いを付けた所為で泉に落ちたらしい。しかし、泉は夜の明かりでは深くも見えたが、体を収めてしまえば腰にも満たない。
二人で笑った、今度は上手く笑っていた気がする。
びしょびしょになった体を乾かそうと、一番日が当たりそうな所へよじ登って、抱き合って眠った。
臆病な過去の自分を自分で嘲う。
ほらみろ、何をそんなに嘘に怯えていたんだ。永い夢から覚めたって家族も、仲間も、自分自身だって、ちゃんとこうして存在しているじゃないか。

やっと見つけた。やっと目が覚めた。

備考:
・耳の中に耳を収納するなんて芸当も出来るとかなんとか
・飛ぶのは苦手だが気流を掴むのは得意

不思議の国:哀れその身、野に埋もれしか [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
まだ成長しきっていない角は上に向って伸びて先が二又、角の周りがまるきり骨だけで皮が無い(角に神経が無い)ので、将来的にはトナカイの様な角になるのではないか、と言われている。
体の要所要所がぺったんこ、成長していないというよりは、成長はしているが中身が無く、主羽は下羽の如く薄っぺらく下羽は紙の(強度はそのままだが)様で、尻尾もまた妙にひょろひょろとして骨っぽい。
副鰭も薄いが何故か引っ張るとよく伸びる、ゴムの如く。舌先が他よりも大きく裂けており、先をそれぞれ自由に(そりゃあもう、うねうねと)動かすことが出来る。

竜形体:まだ竜になれない

人形体:
黒目の割に瞳孔が小さいギョロ目の子供、やっぱり手足が長くて薄ったいが同時にひょろ長く、この姿だと普段の姿より身体的な違和感が(他から見たら)薄い。
鱗が無くなって更にに薄い。舌が器用なのは原型同様で、形は人間の物でも舌を7つに折るという特技がある。
細いが尾羽は二本。小さい耳は敏感らしい。

詳細:嘘吐きを見張る夜。
自分には兄弟がいる、いや、兄弟だったらそこいら中に見渡す限り土にも水にも空気にもゴロゴロ転がってるが、これは自分が不覚にも最も「兄弟」であることを意識してしまう奴の話。しかも、自分より年上のヤツの話。
朝、目が覚めて最初に見た顔がこいつだった時なんて最悪、あいつは明らかに自分に向って「うわぁ、嫌な物見た」というような目を向けてきて、自分の折角目覚めて丸一日のゴキゲンムード(に、なるかもしれないムード)もぶち壊しにされてしまう。
つまんなーい、と言われるとムカつく。殴り合いの喧嘩でもしてやりたくても、あいつは常に自分を子供扱い、同等の土俵に上げようともしない。まあ、自分みたいに可愛い子を可愛がりたくなる気持ちはよーく解るが、子供であることで特するのは好きでも、子供扱いは嫌いだ。
年齢なんて絶対に超えられない物でどうして人を括るのだろう、先に生まれたことがそんなに偉いのか、まったく今日も酷い目にあった。何の疑いも無く自分を膝に乗せているこいつ、夜の砂漠の寒さに自分の体温で暖を取ろうとしているこいつ、何故そんなに、酷く空虚な顔をする? 折角自分を膝に乗せるのを許してやっているのに。
あの横顔、顔は笑っていると言うのに、覗き込む瞳に浮ぶ憂いに似た感情は何だ、まるで永過ぎる旅路に酷く疲れ果てた旅人の様な、疲れや苦しみなんて、過去も未来も砂の中に埋もれ続けている自分達には無縁のことだというのに。無縁になれるからこそ、自分達は砂漠に留まったんじゃあなかったのか?
瞳を覗けば向けられるのは自分に向った不快な言葉、しかしほんの一瞬、一日が終わる瞬間にだけ、その顔は姿を現す。他の誰かはこの表情に気が付いているだろうか、いや、これは表情にすらなっていない、もしかしたら、この刹那は本人すら知らないことなのかもしれない。
その日もまた馬鹿にされて、真夜中に起きると、子供は寝てろ、とからかられて。またあの顔をされた。止めろ、如何してその顔を自分に向ける、自分と一緒にいる時だけそんなに酷い顔をして、何も出来ない自分を苛むんだ。日が昇ってしまえば全て消える、嘘だったかの様に全てが影の中に消えて、瞳の中まで笑い顔に染まる。
きっとまた、自分をからかう為の嘘に違いないんだ、こいつはあんなに嘘ばかり言っていたのだから。今日もアレを見た、次の日も、また次の日も、これに気が付いているのはきっと自分一人、自分は何時の間にかこの大嘘吐きの見張りになっていた。何から見張っているのかは自分でも解らないが。
残り火が音を立てる中、口癖の様なつまらん、と、悪態の中に混じって「外へ出たい」という折の話をした。出て行きたければ出て行けば良い、悪態でそっくり押し付けてやる。外に出たい、竜人が「自由になりたい」なんてのたまうとか、タチの悪い冗談みたいじゃないか。旅人、終わらない旅、それが自由なのだろう?
心の何処かで、永遠なんてものは此の世に無いとは解っていた、日が沈むのを止められない様に何時かは自分達も此処を出て、広い外の世界へ出て行かなければならないのだろう、と。でも、この場所は居心地が良くて、あまりにも懐かしさに絆されてしまう。
どちらにしても、子供の自分に出来ることは無い。自分はこの場所から出て行く時は、自分で自分の全てに決着を付けてから出て行くつもりだった、こいつもきっとそうだ、自分達は本当に良く似ているのだから。
それでも、こいつが自分にした様に罵詈雑言に混ぜて一言「付いて行く」とだけ言う事にした。他の誰にも解らないだろう、一番近い場所にいる自分にしか、こいつの徐々に砂漠から外れつつあった感情を見抜けた様に。この繋がりを破壊する楽園ならいらない。
これが、酷い眼をしたこいつを見る最後の日。
翌日、久しぶりの旅人が沢山やって来た。打算に眼を輝かせたあいつに連れられて。
耳打ち。
約束は守ろう、自分は大嘘吐きではないのだから。

備考:
・飲み過ぎてお腹壊して以来、動物の乳は苦手
・本人も嘘吐き、飽きっぽい
・実は人に変身出来るようなるのがかなり遅かった

氷室の者:思い出したことがあるかい、子供の頃を。その感触、その時の言葉、その時の気持ち。 何かを残すにつれ、何かを捨てていくのだろう。時間は待ってはくれない。にぎりしめても、ひらいたと同時に離れていく。そして…… [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
頭部から後ろに向って反り返る角、先は反しの様に更に反り返っている。鰓は大きく裂ける様で、鰭部分は大きさこそそれ程でもない(年齢の割りに成長している)が肉厚、分泌液は大目。
成長しきっていないのもあるが触手部分のみ鱗が薄く、皮膚も然程強くないので柔らかい(脆い)、触った感触は軟体生物を思わせる。
副羽は鰭としての面影より、羽としての機能を強く感じさせる程に成長しており、下に付いた副鰭もまた非常に大きく長く、先は幅広で、先端まで細かく動かすことが可能。
副指が他よりも大きく、丸い。

竜形体:水竜
胴体と羽が同化した結果ひし形のシルエットを持つ姿形(マンタっぽい)に、体の表と裏に二対ある長く細い角、口元から生えた髭、先に強力な毒針の付いた長い尾が特徴。
見かけの通りに水中に強く、鰓が強化されているのでほぼ無期限の水中活動が可能。背中から尾に掛けて細いながらにまるで鉱石の様な甲殻を持ち、これは日光の光を体内に熱として蓄え、外へと放出させることによって虹色輝かせる事が出来る。
角からは生体電気を発する事が可能で、長時間の放出には向かないが、瞬間的になら海を沸騰させるほどの電撃球を放つことが可能。 深海でこれを使うと、辺りがまるで真昼の様に明るくなる。
しかし、皮膚や鱗には絶縁性は無く体脂肪が非常に沢山付いていて、これが内臓まで熱を通さない仕組み、溶岩の熱にも耐えられる高い耐熱性、耐火性を持っている。
尾の毒は相手を殺害することはないが非常に強力で、主に神経に作用し、相手の動きを麻痺させて完全に封じることが出来る。毒その物に殺傷力が無いとはいえ、身動きが全く取れない状況で獣溢れる野に投げ出されるということは、ほぼ死刑宣告。

人形体:
全体を通して硬質さが無く曲線で構成された体、女性的というよりは幼さからくる物で、そこに性別という概念は感じさせない。齧ったら確実に美味しそうな。
原型時より若干肌の血色が良くなり、膝や肘、踵等の皮膚が薄い(または角質化し易い)部分が(皮膚の下の血が透けて)赤くなっている。寒いと更に赤味が強くなるらしい。(見かけより体温は低い)
手の平にえくぼがある。

詳細:昔を思い出す。
永遠のなんと素晴らしいことか、愛にせよ、情にせよ、終わり無く広がる砂の大地を前に彼はそう考えるまでもなく感じる。自分達に許された時間は永遠で、その永久の中を好きなだけ漂う事を許される、それは正に美徳と呼ぶ他無い。
しかし、彼にも一つだけ不満な事があった、それは退屈なことだ。毎日毎日毎日毎日、産まれた時からこの光景しか知らないに等しいが、こうも毎日起伏が無いと退屈で岩にでもなってしまうのではないか、そんな事を考えてしまう程に。
家族にその事を持ちかけてみた時、家族は皆口々に「なら一緒に遊ぼうよ」と遊びに誘われて、根本的解決にならないから、と断る。永遠の縁に座って永遠の流れを見続ける事は、美しくはあるが退屈で、岩になれるというならいっそ岩になりたい。岩なら退屈も感じないだろう。
そういう時は過去を夢想する、特に思い出せる様な輝く過去も無いが、地平線に沈む夕日を延々と思い出し続ける、自分があまりにも考えすぎて知恵熱を出して倒れるまで。気が付けば夜、水をばしゃばしゃ被って頭を冷やし、また永遠の縁に座り、覗き込む。美しい、そして、なんて倦怠としているのだろう。
何が起こっても自分の倦怠は変わらずに、心の何処かが冷たく冷めている様な……話に聞く氷という物でも、きっとここまでは冷たくは無いだろう。縦穴状になった水場に飛び込んで、最も深くまで潜り込んだとしても、自分の冷えた心よりは生温い。
「退屈だと言いつつ、お前は何もしていないじゃあないか」家族が半ば強引に引き寄せ、共に砂漠に住むことになった仲間にそんなことを言われ、暇潰し代わりにもう一度自分の過去を夢想した。永遠の過去、そういえば、自分には退屈ではない状態以外の記憶が無い。退屈を振り切ろうと明確な行動をする記憶も。
自分はもしや退屈を好いている? そんな筈は無い、それならこの状態が一般的な喜びだとでもいうのか、ありえてたまるか。知恵熱で倒れた後も、また直ぐに酷い頭痛を起こす事位は解っているというのにまた、一欠片でもいい、この感情を自分が招いた物ではないという確証を探す。
結局、確証は見つからず、退屈の記憶の上に疑問の記憶が上塗りされるのを感じて、ふと思う。自分に思い出せない過去が無いこと、あまりにも平坦な過去は自分の中で途切れる事無く一枚の物として続き、自分はそうして全ての日を記憶しようとしていたことを。
正に永遠の過去、日々が同じなら自分が生きてきた年数だけを覚えていれば、何もかもを忘れてしまう必要が無い。そこにあった筈の何かを忘れて、自分自身が変わってしまうこともなく、そして、忘れていたことその物を永遠に思い出さなければ、過去に出会った全てを忘れてしまうこともない。
ああ、忘れない為に、自分は退屈でいようとしていたのか。時間はけして待ってはくれず、手を握り絞めても、放したと同時に離れてしまう……そして、永遠に忘却されてしまう。忘却の彼方に消えてしまうことは、とても悲しすぎる。
そうは思いながら、自分は自分のことすらも思い出せなくなっていた、それこそ、自分の存在すら忘却に返してしまいそうになっていた。夢想を続けるには、自分達に用意された永遠は残酷極まりなく。自分は、その永すぎる永遠の中に消えたくなかった筈なのに。
夜が明ける。
明日、そう、最初に会った誰かと話をしよう。退屈だった過去でも、退屈だったと笑いあって。
何時か、自分の永遠が過ぎ去った後、後の時代を生きる誰かが、古い思い出として語れるように。

備考:
・竜形体で飛ぶことは出来るが、体表の水分が薄れると弱る為、低空を滑る様に飛ぶ場合が多い。
・妙な口調は罰ゲーム(未だに許してもらえてない)

道化師の者:過去を並べた盤を囲み [もの]

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種族:竜人

外見の差異:
・両性
全体的に器官の細部が細長く、背中の触手、触椀、触角の感覚器官関係が非常に長い。角は長さこそ然程でもないが巻く事は殆ど無く、少し先が撓る程度で真っ直ぐに伸びている。
しかし、羽の可動部に加速に必要な必要な筋肉が少しばかり(薄い)弱く、風を捉え長時間飛び続けるのは得意だが、最高速度になるには時間が掛かる様子。(肉抜き状態なのでスピードはある)
手足にある鍵爪は角とは逆に先が湾曲しており、握力は強い。
尾羽の数は六本、これまた長い。

竜形体:鳥竜
全身に鱗より多く羽毛を生やしており、強靭な嘴は先が喰い違う様になっており、これは主に物を千切るというよりは切断することに特化した作り。
角は無く、その代わりに骨の通った扇の様に広がる五対の鶏冠があり、自分の意思でこれを閉じたり広げたり出来る。
前足と同化した巨大な羽は、外見だけなら翼といった風だが、作りはほぼ原型の羽と変わらず(若干厚みがある、これのお陰で竜形体ならスピードの出も早い)羽毛が生えているだけ。
後ろ足の爪は硬く、握力も恐ろしく強い。握りつぶす為の爪。
自分の竜姿を気に入っているのでよく変身する。

人形体:
透けるような色の肌に赤い唇、どうにも周りから浮くような外見、見た目通りに強度は他の誰かの人間形体よりも遥かに(強度は)弱い。
変化で感覚器官は仕舞われている筈だというのに、何故か原型で全ての感覚器官を出しっ放しにした時並に敏感。索摘に優れる。
面倒臭いので本人は変身したがらない。

詳細:風を呼び込む嘘吐き
彼は何かをずっと探していた。元より退屈ということが大嫌いな生粋の快楽主義者、欲しい物はどんな手段を使ってでも手にいれないと気がすまないという、どうも回りからズレた間性を持っていた彼だけあって、それは自分の中で許せなかった。
同族達の中でもこれほど強欲な奴は少ない、特技は嘘を付く事、それといってもちょっとした物だったが、嘘は彼の事をどんな時でも良い方向に押し上げてくれた。あたりまえか、良くする為に吐くのだから。悪いことだというのは解る、それでも悪いこと程楽しい、自分が悪者なのはよーく解ってる。
石の裏をひっくり返しても見つかるのは冬眠中の虫か、珍しくてカエルや蛇、藪を掻き分けても見つかるのは驚いて飛び出すトカゲ程度、本当に欲しい物は何もかもこの場所には無い、嘘を知った彼は不機嫌に「つまんない」と呟く。
もういっそ、外に出て行って欲しい物を探しに行こうか、外の世界は楽しそう、きっと外だったら自分の欲しい物はある筈。22個目の木の実を握り潰した時、どうにかして外に出れないものか、そう考えた。
外の話を誰かから聞いたり話したりする内に心の底から外へ出たくなる、それも何度も何度も。今までどうして外に出ようとか思わなかったのか、世界一の名案だ、ならさっさと家族に言って出て行こう。言わなくても出て行ってしまえ。
あ、首の後ろが少しザワザワする、今日はスコールの日らしい、華々しく旅立つなら竜になりたいし、翼が濡れるのは嫌だから明日にしよう。翌日、湿った地面が珍しいから明日に。翌々日、サボテンの蕾が膨らんでるから咲いてからにしよう。
最後に旅人が来てから何日経過しただろうか、ある日子供を沢山連れた旅人が、砂漠を渡ろうとしているのを見つける。今の砂漠は落ち着いていて、妙な寄生虫も飛んでないし、砂嵐も暫くはこない……子供に渡りを教えるには持って来いだ。
しかしその時、この狡猾な竜人は全く別のことを考えて、砂の彼方にいる旅人に思念を送る。この砂漠は今は大人しいが何時暴れ出すか解らなく危ない、良ければ自分が大オアシスまでの渡し守になろう、と。
自分達の渡し守としての腕は誰もが知っている、帰って来た色好い返事、指定の場所まで飛び上がった彼は、ずっとずっと探していた物を手に入れた喜びでほくそ笑む。
探していたのは外の形ある何かではない、無意識に理由をつけて踏み止まる足を外へと決起させる、切っ掛けその物だったのだ。
きっと今、何かが始まった。
これで終わりじゃない、この先どうやってもっと多くの切っ掛けを手に入れようか……そう考えを巡らせながら、彼は旅人と出会う前に今の顔を直さねば、そう自分の頬を撫でた。

備考:
・「ツマンナーイ」がほぼ口癖状態
・寝ながら飛べる

廃棄物:お前が私を嫌いになるなら、俺もお前を嫌いになってやる [もの]

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種族:竜人

外見の差異:(此方側の世界観だと奇形化していません)
・両性
強い癖がある髪、常にかなり高い位置にポニーテールにして結び、あまり手入れをしないので質は悪い。
剃っているらしく、眉無し。口が大きい。一族の人間にしては若干男っぽい顔立ち、しかし眼はぎょろりと大きいので、見ようによっては不気味、真夜中に会いたくない人。
歳若いがそれにしては立派な鱗と尾を持ち、外見的には立派に独り立ちも出来そうだが、上羽の厚みが然程でもないので寒さには弱いらしい。
通常はあと一回りは大きくなってから生える体毛も手足に生えており、竜の髭とか言いたくなる程硬く、何故か鰓の脇からも生えている。
後頭部から伸びた触角は通常より短い。

竜形体:地竜
がっしりと全身に筋肉を纏った体格、体表に鱗は少なく尖った印象を持たないが、肉厚なゴム質の表皮(筋肉に見える物は殆ど皮)を持ち、それらは打撃や熱に非常に強い。
口内の牙は鮫と同じ作りで、三重に渡って生えており、牙の表面は鋸の様になっている為、物を直接食い千切るよりは千切り取ることに特化した作りをしている。
暴力的な外見にしては柔軟な肉体。舌には微弱ながら粘着性がある。

人形体:
肌の色が黄色的な意味で濃く人間なのに耳が大きい、確かに竜人の部位は全て消えているが、少し半端な変身。
筋肉質な割に美味しそうな尻、尾てい骨部分が何故か少し出っ張っていて、物に座る時にずっと同じ体勢をしていると尻が痛くなるらしい。
なお、曰く「人になるのは苦手」だそうな。

詳細:砂漠の様な誰か
短気で無鉄砲、自信家で自意識過剰、自惚れ屋でめんどくさがりや。此処まで揃えば良い所なんて無いに等しいが、それは彼なりのキャラ作りの様な物で、本質には遠く及ばない。
家族に笑われる、しょうがないなぁ、と。皆文句は言うが自分を嫌いはしない。自分でもどうしてこんな何かになったのか、そんな物は考えた事はなかったが、漠然と、自分は生まれて最初にする筈だった問題を失敗してしまったか。そう考える。
自分は身勝手だ、自覚している。知っていながらこんな方法を取っている、きっと理由だって解る筈なんだ、解ろうとしないだけで。もっとラクな方法だったら知っているが。
砂漠の様に乾いた目をした彼は、一族の中でも指折り強欲だが同時に無欲であった、自分の性格に難があるのは解っていた、何故だ、嫌っている訳じゃ無いのに。時々、そう悩んでは悪びれずに一人笑う。
無鉄砲でいることはラクだ、何か失敗した所で何時もの事、と流される。自信を持つ事は楽しい、自分が自分を庇う事が出来る。面倒を嫌うことは美徳だ、何故わざわざ面倒ごとに首を突っ込む、永遠の楽園があるのならそこで面白おかしく暮らそうでじゃないか。
しかし、砂は彼を立ち止まらせてはくれなかった、子供というのは無鉄砲にも程があるもので、頑丈な竜人でも流石に流砂に巻き込まれれば流石に無事ではないか、いや、そう考える前に行動の方が早い。
躊躇う事無く飛び上がった自分の身の軽さに、彼は自分で自分に自答する、短気でいたのは考える役以外が必要だからだ。自意識過剰でいたのは自分の持つ自信から相手の存在を立たせる為だ。自惚れ屋だったのは、自分が摂理の中にいることを思い出さない為だ。
互いの熱を殺しあって中濃の温度を保ち続けるよりは、互いを燃やし、焦がし合いながらもあるがままでいたかった。何せ、自分も、相手も、どれも殺すことなんてしたい訳が無い。
流砂の砂の様に流れてしまった時間、それは彼が望んでいた訳では無いが、一つの答えを強制的に叩き出してしまった。心の底では解っていたこと、解っても外に出ない為に忘れようとしていた事、忘れきれなかった物。一生懸けて忘れていた物。

今から、もう一度忘れられるか?

しょうがねぇ、やってやるさ。
彼は気が付いた、自分はあの砂漠の様に冷たくも命との共生を望んでいたのだと。

備考:
・何故か知らないがよく精が縞柄に混ざる
・当然通常語で喋る
・視力がイマイチ良くないらしい

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